「40代を前にして見えてきた、本当に大切なこと」Vol.1

がむしゃらに頑張るだけじゃない ライフスタイル

シリーズスタート:「40代を前にして見えてきた、本当に大切なこと」Vol.1

がむしゃらに頑張るだけじゃない。私がペースを落とすことに決めた理由

今年で40歳を迎えます。振り返れば、39歳のときに体の変化を強く感じるようになりました。それまでは健康に自信があり、大きな不調を感じることもなく過ごしてきました。ところがある日、視界がぼやけるようになり、目の疲れがなかなか取れなくなったのです。その少し後には、まさかの足の骨折。さらに、以前に痛めた膝の痛みが再発し、階段の上り下りすらつらくなってきました。

気づけば運動らしい運動もまったくしておらず、体重はじわじわと増加。お腹まわりもぽっこりとしてきて、体型の変化が気になるようになりました。

それでも仕事は容赦してくれません。朝は早く家を出て、帰宅は夜遅く。体がしんどくても、スケジュールどおりに動かなければいけない日々が続きました。食事は手軽なもので済ませ、睡眠も浅く、常に疲労を感じている状態。やっとの休みも、「何かしなきゃ」という思いばかりが先に立ち、結局ソファで何もせずぼーっと過ごすだけでした。

本来であれば貴重なはずの家族との時間も、気づけば上の空。妻の話にも集中できず、子どもにも気を使わせてしまっているように感じる場面が増えました。「このままではダメだ」と思うようになったのは、そんな日常に対する危機感からでした。

20代や30代の頃の私は、とにかくがむしゃらに働くことが正解だと思っていました。誰よりも遅くまで働き、たくさんのお客様に対応し、自分の技術を高めるための努力も惜しまない。それがプロとして当然の姿勢だと信じていましたし、そのスタイルが評価される世界でもありました。お客様に喜んでもらいたい、信頼されたい、もっと上を目指したい——そんな一心で、毎日を走り続けていたのです。

けれども、体と心が限界に近づいたある日、ふと立ち止まって自分に問いかけてみました。「このままで本当にいいのだろうか?」と。疲れきった身体と気持ちで、ただ目の前のことをこなすだけの毎日をこの先も続けられるのか? そう考えると、不安がこみ上げてきました。

そしてもう一つ気づいたのは、「本当に大切なものを置き去りにしてきたかもしれない」ということでした。家族、自分の体、心の余裕——それらに向き合う時間を削って、仕事にすべてを注ぎ込んできたことへの後悔に近い感情がじわじわと湧いてきたのです。

そこから、少しずつ意識が変わっていきました。まず取り組んだのは、「がんばらなきゃいけない」という思い込みを手放すことでした。「無理してでもやらなきゃ」「完璧でなければ意味がない」——そんな考え方が、実は自分を一番苦しめていたことに気づいたのです。

それからは、「ちゃんと休む」「無理をしない」「完璧じゃなくてもいい」と、自分に優しくすることを心がけました。最初は少し罪悪感がありましたが、少しずつ仕事のペースを調整し、自分の時間を意識的に作るようになりました。

すると、気持ちに少しずつ余裕が生まれました。朝の空の色に目を向けたり、家族との会話をちゃんと楽しめたり。小さなことに目を向けられるようになったことで、「今」を大切にできるようになったと感じています。

今の私は、「とにかく走り続ける」スタイルではなく、「整えながら進む」スタイルを選んでいます。スピードではなく心地よさを優先し、結果だけを追い求めるのではなく、そこに至るプロセスにも価値を見出したいと思うようになりました。他人の評価よりも、自分の内側からくる納得感や満足感を大事にしています。

このシリーズでは、そんな「40代を前にして見えてきた、本当に大切なこと」を、これから少しずつ書き綴っていく予定です。仕事、家族、自分自身——どれも大切だからこそ、バランスを整えながら丁寧に歩んでいく。その過程が、誰かの心にそっと寄り添えるものであれば嬉しいです。

 

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